中国には「方言」がたくさんあり、上海語や広東語、北京語ではまったく別の言語といってもいいくらいの差があります。
「お茶を飲む」という言い方を見てみると、“喝茶”“吃茶”“饮茶”という、大きく分けて3つの言い方が存在します。地域的には北京、上海、広東ということになります。このうち、“吃茶”は日本の漢字に直せば「喫茶」であり、日本人にもなじみ深いものです。“饮茶”もいわゆる「飲茶(やむちゃ)」として日本でもよく見受けられます。
一方、“喝茶”はどうでしょうか。“喝”は日本では、「喝采(かっさい)」「恐喝」という熟語があるように「大声を出す」という意味でしか使われません。日本の漢字はだいたい古い中国語の意味と音を伝えていますから、古い時代には“喝”には「飲む」という意味はなかったのでしょう。つまり、“喝茶”は中国語においては割と新しい言い方なのです。実際、『説文解字』という漢代の本には、“喝”には「飲む」という意味は収められていないのです。
時代的には“饮茶”“吃茶”“喝茶”の順に現れてきます。このことからも、古い中国語は南に残されており、北の中国語は新しい中国語だといわれています。声調についても同じで、古い中国語は8声あったといわれています。現在では、広東語は9声、上海語は6声、北京語が最も少なく4声です。修飾構造も、今の中国語は日本語と同じように「修飾語+被修飾語」ですが、古い中国語では「被修飾語+修飾語」でした。ベトナムのことを中国語では“越南”といいますが、これはまさに「南の越」であり、修飾語が後ろに置かれています。「アイスキャンディー」は、北では“冰棍儿”といいますが、上海では“棒冰”といいます。