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第30回 元首たちの古典教養その16 ーー日出江花红胜火,春来江水绿如蓝。|現代に生きる中国古典
- 2017/5/14
- 現代に生きる中国古典, 西川芳樹
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桜が散り、新緑の美しい季節になりました。中国でも春には、梅、杏、桃などの花が咲き、柳をはじめ多くの植物が新芽を伸ばします。さて、春の景色を詠んだ詩に、白居易の「憶江南」詩があります。
この詩は、白居易がかつて住んでいた江南地方を思い出し詠んだ詩です。中でも「日出江花红胜火,春来江水绿如蓝。」は、春の景色の美しさを見事にとらえた言葉として古くから知られており、随筆や新聞、講演などで春が話題になると、よく引かれます。
春の景色を詠んだこの句ですが、朱鎔基元首相は少し変わった使い方をしています。1999年、第一回中国国際高度先端技術成果貿易商談会が深圳で開かれました。この開会式に出席した朱鎔基は、経済と社会の発展に科学技術は不可欠であると語り、演説の最後を以下のように締めくくりました。
ここでの「日出江花红胜火,春来江水绿如蓝。」は、春の景色ではなさそうです。朱鎔基と同時期に国家主席を務めた江沢民も別の演説でこの言葉を使い、次のように述べています。
以上の例から推すに、「日出江花红胜火,春来江水绿如蓝。」は、春の木々が夏に向けてすくすくと育つように、繁栄に向かい勢いよく成長する様を表しているのでしょう。古典を再解釈して、従来にはない新たな意味を付与したのです。
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