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第24回 元首たちの古典教養その13――江山代有才人出|現代に生きる中国古典
- 2016/11/16
- 現代に生きる中国古典, 西川芳樹
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2000年、当時の国家主席であった江沢民は、科学者や技術者たちを前に「在中国科学院第十次、中国工程院第五次院士大会上的讲话」という演説をし、科学の発展が国家や世界の繁栄には不可欠であり、科学の更なる発展には若い世代の科学者の出現が必要であると説きました。そして、江沢民は演説の最後で次のように述べています。
江沢民が演説で使った「江山代有才人出」という言葉は、趙翼の詩「論詩」の一節を引用したものです。趙翼は清王朝を代表する歴史家の一人として知られていますが、同時に優れた詩人でもあり、「乾隆の三大家」の一人に数えられています。「論詩」は全部で五首からなり、江沢民が引いたのは「其の二」です。「其の二」は、趙翼の「論詩」といえば特に断りがないかぎり、この詩を指すくらいに有名です。
さて、それでは詩を見てみましょう。
この詩の内容は、李白や杜甫といった古い詩の模倣作ばかりつくるのではなく、唐以降の優れた詩人がそうであったように、新しい詩の境地を切り開くべきであるということです。つまり、この詩がいう「江山代有才人出」とは「国土から新たな天才が出てくる」という意味です。一方、江沢民は、詩全体の意味を踏まえ、国から若い世代が現れるだけではなく、それまでの世代を越えて新しい境地を切り開くという部分をより強調して引用しています。
「江山代有才人出」は、本来的な言葉の意味から、歴史がある会社や学校、研究所などの多士済々ぶりを褒めるときに使ってもいいでしょうし、江沢民のように若手の人材発掘へと目を向けさせる際にも使えます。若手を前に話をするならば、彼らを鼓舞する使い方も可能でしょう。また「○○代有才人出」と「江山」の部分を捩って使うこともでき、応用範囲の広い言葉といえるでしょう。
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