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第8回 元首たちの古典教養その5―博学之,审问之,慎思之,明辨之,笃行之―|現代に生きる中国古典
- 2015/5/13
- 現代に生きる中国古典, 西川芳樹
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今回は、現国家主席である習近平が満を持しての登場です。習近平は、インタビューで、趣味は登山、水泳など多いが、一番の趣味は読書だと答えています。忙しい公務の合間に時間を見つけては読書に勤しんでいるようで――筆者の個人的な感想ですが――これまでの指導者と比べても、その発言に古典の引用が多く見られると思います。
習近平は、中国共産党中央党校の開校80周年兼2013年春学期始業式でスピーチをしました。中国共産党中央党校は、中央委員会直轄の中国共産党高級幹部養成学校であり、毛沢東、劉少奇、華国峰、胡錦濤ら錚々たるメンバーが校長を務めました。習近平も例に漏れず、国家主席になる前の2007年から5年間、校長を経験しています。
習近平のスピーチは非常に長いので、古典を引用した部分の前後を挙げます。
(「习近平在中央党校建校80周年庆祝大会暨2013年春季学期开学典礼上的讲话」より)
このスピーチは、『論語』から毛沢東まで、古今の書物から広く言葉を引用しており、古典語実用例の見本市のようです。
さて、習近平の引いた「博学之,审问之,慎思之,明辨之,笃行之」は、儒教経典「四書」の一つ『中庸』に見える言葉です。『中庸』は、もともと『礼記』の中の一編なので、『礼記』にも同じ文が含まれています。該当部分を挙げます。
この言葉は、問題解決のための学習を説いていますが、ただ知識を詰め込むだけに止まらず、熟考を経て、実行するところまでを一つと捉えています。習近平は、高級幹部に深く考え、実践することをしばしば求めています。政治は、理論と実際に行う政策とを結び付けなければなりません。そのため、将来の高級幹部たちに、学び得た知識から実際の方策を打ち出す訓練をするように訓示したのでしょう。
「博学之,审问之,慎思之,明辨之,笃行之」の精神は、政治以外の場でも、あらゆる仕事や問題の解決に通じる考え方であり、さまざまなビジネスシーンで使える言葉でしょう。また、「二音節動詞+之」の羅列は、動詞を入れ替えたり、六つ目の「二音節動詞+之」を加えたりと応用がきき、言葉遊びがしやすく当意即妙のやりとりで笑いを取ることもできるでしょう。あなたは六つ目に何を加えますか。
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