連載の紹介:中国は悠久の歴史の中で多くの書物が編まれ、その中から多くの古典が生まれてきた。中国語を学ぶものは、ほとんどの場合、現代中国語(口語)を学び、古典文(文語)は特別な感心を持たない限り、積極的に学ぶことはないように思われる。古典を知らなくとも、実際のコミュニケーションや生活に差し障ることは殆どないだろう。
だが、中国では古典が教養として、あるいは、行動の規範として根付いる。中国でビジネスをする日本人にとって、『韓非子』や『貞観政要』が、中国人的思考を学ぶ必読の書となっていることはその例であろう・・・(第1回目「元首たちの古典教養」より)
難易度:★★
更新頻度:1か月に1回(不定期)
連載記事一覧
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第37回 日本語の中の中国語その17――ほぞをかむ
「臍を噬む」は「後悔する。取り返しのつかないことを悔やむ」(『広辞苑』第七版)という意味で、後になってからあの時やっていればと悔いることを表します。もっとも最近では、後になってふり返るのではなく、ただ、ひどく悔しい思い…
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第9回 日本語の中の中国語その4―泥酔―|現代に生きる中国古典
先日、授業を何度も休んでいた学生が、久々に授業に出てきた。筆者が欠席の理由をたずねたところ、学生から「バイトで泥のように働いていました」との返事が返ってきました。耳慣れない言葉に、誤用ではないかと指摘すると、学生はこう…
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第8回 元首たちの古典教養その5―博学之,审问之,慎思之,明辨之,笃行之―|現代に生きる中国古典
今回は、現国家主席である習近平が満を持しての登場です。習近平は、インタビューで、趣味は登山、水泳など多いが、一番の趣味は読書だと答えています。忙しい公務の合間に時間を見つけては読書に勤しんでいるようで――筆者の個人的な…
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第10回 元首たちの古典教養その6―横看成嶺側成峯―|現代に生きる中国古典
2014年6月18日、李克強総理は、イギリスの王立国際問題研究所で「共建包容发展的美好世界」という講演をしました。李克強は講演の中で、中国の社会と経済に関する現状報告をし、中国とイギリスの各方面での関係強化を訴えていま…
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第14回 元首たちの古典教養その8―――草树知春不久归,百般红紫斗芳菲―|現代に生きる中国古典
2012年5月8日、北京で第四次米中戦略経済対話が開かれ、米中両国の関係発展と、あらゆる方面の長期的問題についての戦略的対話がなされました。当時の国家主席だった胡錦濤は、開幕式で式辞を述べ、その最後を次のように締めくく…
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第13回 日本語の中の中国語その6―口は災いのもと―|現代に生きる中国古典
インターネットを見ていると、連日のように失言に関する話題を目にします。失言は恐ろしいもので、たった一言の余計な言葉のために社会的地位を失った人もいました。まさに「口は災いのもと」です。「口は災いのもと」は、「口は禍の門…
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第11回 日本語の中の中国語その5―数奇―|現代に生きる中国古典
台湾の映画監督である侯孝賢の最新作「刺客聶隠娘(邦題「黒衣の刺客」)」が間もなく日本で封切られます。「悲情城市」の侯孝賢がメガホンを取るほか、古典小説「聶隠娘」がモデルとあって、公開が楽しみです。先日、この映画の紹介を…
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第12回 元首たちの古典教養その7―言者无罪,闻者足戒―|現代に生きる中国古典
1944年、毛沢東は、『一九四五年的任务』という十五条からなる文章を発表しました。その十四条では、国民党との差別化を図るため、共産党の指導者たちに次のようなことを呼びかけています。 各级领导人员,有责任听…
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第3回 元首たちの古典教養その2―嘤其鸣矣,求其有声|現代に生きる中国古典
最近、中国人留学生が中国語の授業を履修するようになってきた。授業では、日本人学生の会話の練習相手になってもらったり、最新の中国事情を話してもらったりと、協力してもらっている。彼らは、授業や日本での暮らしで感じた日本と中…
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第1回 元首たちの古典教養|現代に生きる中国古典
中国では悠久の歴史の中で多くの書物が編まれ、その中から多くの古典が生まれてきた。中国語を学ぶものは、ほとんどの場合、現代中国語(口語)を学び、古典文(文語)は特別な関心を持たない限り、積極的に学ぶことはないように思われ…
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第2回 内助|現代に生きる中国古典
ヤンキースの田中将大投手が、故障からの復帰戦を勝利で飾ったとの報道が伝えられた。野球に限らず、サッカー、テニスなど、日本人選手の海外での活躍が連日のように報道される。そして、メディアは同時に選手夫人の「内助の功」につい…
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第6回 元首たちの古典教養その4―鞠躬尽瘁,死而后已―|現代に生きる中国古典
1995年、陝西省と甘粛省は、大規模な干ばつにみまわれた。当時、国家主席であった江沢民は、被災地を慰問し、現地の幹部たちを次のように激励した。 まだ数多くの人びとが衣食に不自由しているだろう。そして、自然条件が悪いため…
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第7回 日本語の中の中国古典その3―満を持す―|現代に生きる中国古典
先日、野球のイチロー選手がマーリンズへ移籍後、初めて試合に出場したというニュースを読んだ。イチロー選手は、控え選手として試合開始を迎えたが、8回に代打で出場を果たした。イチロー選手の登場を待ち望んでいた現地のファンは、…
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第4回 元首たちの古典教養その3―不积小流,无以成大海―|現代に生きる中国古典
『三国志演義』で有名な劉備、関羽、張飛は、非常に強い信頼で結ばれていた。この信頼関係は、何十年も行動を共にする中で築かれたものであろう。本当の信頼関係、協力関係は、時間をかけて多くの問題を共にくぐり抜けた末に築かれるも…
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第5回 日本語の中の中国古典その2― 紅一点 ―|現代に生きる中国古典
先日、近所の郵便局へ手紙を出しに行った。郵便局には郵便と預金の窓口があり、それぞれに担当職員が座っている。そして、窓口の隣に20センチ四方のホワイトボードがあり、そこに、ポップな文字で担当職員の名前とコメントが書いてあ…
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第15回 日本語の中の中国語その6―――手に汗を握る|現代に生きる中国古典
手に汗握る熱戦!スポーツの見出しなどでよく見る言葉です。この「手に汗を握る」という言葉が、使われる場面を調べてみると、やはり野球の好ゲームなどスポーツと結びつけられて使われることが多いようです。この他には、少数ですが、…
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第26回 元首たちの古典教養その14――十年磨一剑|現代に生きる中国古典
koten0026 近年、日本では学術論文の不正が問題となっています。中国でもこのような問題は起きていて、その最も有名なものに「漢芯事件」があります。これは、上海のある大学教授が革新的な性能を持つ半導体の製造法を…
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第27回 日本語の中の中国語その12――贔屓|現代に生きる中国古典
このコーナーではいつも、ことわざを中心に、中国の古典に由来する言葉を紹介していますが、今回はことわざではなく、「贔屓」という語彙を取り上げ、その古典の言葉から現代日本語への変遷について紹介したいと思います。 「贔屓…
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第28回 元首たちの古典教養その15――长风破浪会有时,直挂云帆济沧海。
2016年11月21日、習近平はペルーで演説を行い、中国とラテンアメリカの結びつきを更なるものにしようと呼びかけました。 “长风破浪会有时,直挂云帆济沧海。”包括中国和拉美国家在内的广大发展中国家面临着开…
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第25回 日本語の中の中国語その11――災いを転じて福となす|現代に生きる中国古典
「災い転じて福と為す」は、「身に降りかかった災難をうまく活用して、かえってしあわせになるよう取りはからう。」(『広辞苑』)という意味ですが、雑誌の中で「不幸なことの後に幸運な出来事が起きる」という意味で使われているのを…
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第24回 元首たちの古典教養その13――江山代有才人出|現代に生きる中国古典
2000年、当時の国家主席であった江沢民は、科学者や技術者たちを前に「在中国科学院第十次、中国工程院第五次院士大会上的讲话」という演説をし、科学の発展が国家や世界の繁栄には不可欠であり、科学の更なる発展には若い世代の科学…
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第35回 日本語の中の中国語その16――呉越同舟
「呉越同舟」というと、「仲の悪い者同士が同じ場所にいること。また、行動を共にすること。」(『大辞林』)を指します。この言葉は兵法書として有名な『孫子』に由来しています。以下、『孫子』を少し読んでみましょう。該当部分は問…
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第36回 元首たちの古典教養その19――谁言寸草心,报得三春晖
温家宝は母校の北京地質学院で講演をしました。講演では、地質学の研究に没頭した自身の学生時代をふり返り、結核にかかって部屋を隔離されながらも勉強を続けたことを紹介しました。そして、この様な苦労が自分を精神的に鍛え上げたのだ…
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第34回 元首たちの古典教養その18――世上无难事,只要肯登攀
古典というと近代以前に記された書物と思いがちですが、決してそうとは限りません。近代中国成立以後の人物が書いた詩文であっても、広く中国人に知られ、時代を超える普遍的価値を持つものであれば、それは新たな古典になります。元首…
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第30回 元首たちの古典教養その16 ーー日出江花红胜火,春来江水绿如蓝。|現代に生きる中国古典
桜が散り、新緑の美しい季節になりました。中国でも春には、梅、杏、桃などの花が咲き、柳をはじめ多くの植物が新芽を伸ばします。さて、春の景色を詠んだ詩に、白居易の「憶江南」詩があります。 江南好, 江南…
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第31回 日本語の中の中国語その14――目に一丁なし(1)
「目に一丁字なし」は、「全く文字が読めない。無学である。」(『日本国語大辞典』)という意味です。この言葉の由来については『大漢和辞典』に詳しい説明があるので、まずはこれを紹介します。『大漢和辞典』の「不識一丁字」項目に…
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第32回 元首たちの古典教養その17 ーー忧民之忧者,民亦忧其忧|現代に生きる中国古典
元首たちが引く古典には為政者としての心構えについて述べたものが多く見られます。そして、古典の名言を行動の規範とするのは、何も国を統治する最高指導者たちだけではなく、一般の役人も同じです。 2007年の春節、首相であ…
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第33回 日本語の中の中国語その15――圧巻
筆者が中国語を教わったある先生は、毎回の授業で必ず小テストを行いました。翌週の授業で採点した答案を返してくれるのですが、この時に、満点が一番上に来るよう点数の良い順に答案を並び替え、点数の高い人から順に返却するのでした…
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第23回 日本語の中の中国語その10――食指が動く|現代に生きる中国古典
「食指が動く」という言葉があります。「食指を動かす」ともいい、『広辞苑』第六版によると「食欲が起こる。転じて、物事を求める心が起こる」という意味です。 「食指が動く」は『春秋左氏伝』に伝わる出来事に由来します。舞台…
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第16回 元首たちの古典教養その9――凡交,近则必相糜以信,远则必忠之以言――|現代に生きる中国古典
2006年4月、当時首相であった温家宝は、オーストラリア、ニュージーランド、フィジーそしてカンボジアを歴訪しました。忙しい外交日程の中、温家宝は、各地の華僑とも会談し、国が平和な環境をつくる方法として次のように述べまし…
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第17回 枕を高くする|現代に生きる中国古典
先日、友人と話している時のこと、「枕を高くする」という言葉があるが、どうして「安心する」と言う意味になるのだろうか、枕が高ければ、かえって寝づらいだろう、と話題になりました。 「枕を高くする」は、「何の不安もなしに…
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第18回 元首たちの古典教養その10――取火莫若取燧,汲水莫若凿井――|現代に生きる中国古典
2009年、温家宝首相は外国人記者から、国際的な金融危機のなか中国のGDP成長率8%という目標を達成するのは困難ではないかと質問をうけました。温家宝は、確かに難しかもしれないが、可能であるとの見方を示し、次のように述べま…
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第19回 日本語の中の中国語その8――中らずと雖も遠からず――|現代に生きる中国古典
友人のブログを読んでいて「近からずとも遠からず」という言葉を目にしました。耳慣れない言葉だったので、そんな用法があるのかと思いネットで検索したところ、たしかに沢山の用例が見つかりました。どうやら、物理的な距離がそれほど…
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第22回 元首たちの古典教養その12――己欲立而立人,己欲达而达人――|現代に生きる中国古典
2014年9月18日、習近平国家主席はインドのデリーで開かれた世界事務委員会で「携手追寻民族复兴之梦」という演説をしました。この中で、中国とインドの協力関係をさらに発展させて民族復興、アジアの発展などの多方面で連携する…
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第21回 日本語の中の中国語その9――虎は死して皮を残し、人は死して名を残す――|現代に生きる中国古典
大河ドラマ『真田丸』が人気ですが、その主人公の真田幸村は、大坂夏の陣で不利な豊臣方に味方し、奮戦の末に壮絶な討ち死にをとげたことで知られています。大坂夏の陣では、真田幸村の他にも、後藤又兵衛や毛利勝永など多くの武将が豊…
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第20回 元首たちの古典教養その11――花径不曾缘客扫,蓬门今始为君开――|現代に生きる中国古典
ここ数年、中国人に対するビザ発給要件が緩和されるにつれ、中国人旅行者の数が急激に増えています。筆者は、自宅が空港の近くにあるので、毎日電車に乗るたびに、空港から各地へ向かう中国人旅行者の姿を目にし、街を歩いていても、至…
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