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工場通訳の心得|中国語通訳というお仕事
- 2015/6/22
- 中国語通訳というお仕事, 山岡義則
- 工場通訳
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中国語と付き合いはじめてから三十数年。
関西大学で中国語を学び(実際にはNHK講座のテレビとラジオ、この他、中国語を身に付けるためにいろんな方法を採りました)、その後、日中専門商社に入り、入社してすぐに中国に出張し、通訳をしていました。
それから三十年。中国と中国語にこだわり続けてきましたが、ここ十数年は日本にいるときには中国語講師をし、依頼があれば中国にある日系の工場で経営のお手伝いをしてきました。
自ら中国語を使用し、日中双方に相手側を理解していただくことで問題を根本的に解決し、また、問題の発生を未然に防ぐようにしてきたおかげで、通訳としてどのようにすれば良いのかということについて少しはわかるようなりました。
でも、実は通訳は苦手なのです。でも、苦手ながら今、ある日本の工場で通訳として働いているといつのまにか経験が多くなり、私の経験などがこれから通訳になろう、通訳をしようという方にとって参考になるかも知れないと思うようになりました。
個人の考えなので、偏っているかも知れませんが、何かの参考になればと思います。
通訳といってもいろんな通訳があります。
須磨みのり先生が紹介されていた法廷通訳もありますし、同時通訳が必要な会議通訳もありますが、私の場合は今、工場で通訳をしているので、その状況をご紹介してまいります。
・もっとも困る工場での通訳とは。
今、これから中国に新しく工場を作る会社で通訳をしていますが、通訳を含めて社員を一から求人していますが、その時に、自らも中国語を理解し、通訳を使った経験のある社員が次のように言っていました。
「とにかくわからないときにはちゃんと『わからない』と言ってくれる通訳ならいい。通訳が本当はわからないのに『わからない』と言わずごまかして、適当に通訳されていると、話をしていてどうもおかしいと感じる。そこでよくよく聞いてみると、通訳がわかっていないことがわかる。こんなことが多々ある。」
通訳をしていて常に100%理解し、それを別の外国語表現にすることができるかというとそんなことはありません。
特に、工場での通訳は技術的なことが多く、専門用語も多く、また、通訳を使ったことのない人は、相手にわかりやすいように(伝わりやすいように)表現してくれるとは限らず、しっかりと意味を把握した上で通訳しなければなりませんが、その時に、わからない言うと、評価が下がるとか恥ずかしいとか思い、適当に通訳しても、技術的なことはすぐにつじつまが合わなくなり、通訳者以外の日本人技術者、中国人技術者は通訳者の通訳内容に問題があることがすぐにわかってしまいます。
工場での通訳は、雇う側(工場側)も通訳することが難しい内容だということはよくわかっているので、通訳者がわからないからといって評価を下げたりはしません。それよりも、仕事がスムーズに進み、相互理解が深まることを望んでいます。ですから、わからないときにははっきりと「わかりません」といい、意味を確認する必要があります。
もっとも、だからと言って、何事にも限度があります。
専門的な内容で専門家しかわからないような内容は通訳者が理解しようとして長々と時間を使うより、通訳者は理解しなくても、直訳することで技術者同士は理解し合えることもありますので注意が必要です。
・通訳者として最低限必要なこと。
今、日本人通訳者が私を含めて三名、日本で採用された中国人通訳者が一人、そして中国から来た中国人通訳者が数名いるのですが、日本人通訳者の一人と中国から来た中国人通訳者はみんなメモをとっていません。
「人、特に仕事上で上司の話を聞くときには必ずメモをとるように」
日本の社会人としては常識だと思うのですが、通訳者の場合にはそれ以外に、通訳の技術の一つとしての「ノートテイキング」をマスターする必要があります。
工場での通訳で一番基本となるのは逐語訳。つまり、何分か話されたことをまとめて外国語に訳します。この時にたとえ、すべて覚えることができたとしても、念のため、そして自分の備忘のためにもノートをとる必要があります。
具体的なノートの取り方は、ネットでもいろいろと情報があるのでここではご紹介しませんが、とにかく通訳する。それも逐語訳をするときにはノートは常に持っておき、適宜、メモをとることをおすすめします。いえ、逐語訳でメモをとっていないということは、日本社会では通訳者として一人前だと見てもらえないとさえ思いますので必ずノートテイキングの技術を習得した上で通訳にのぞんでください。
最後にもう一つアドバイスを。
ノートテイキングも学び、さて通訳デビューというときには準備はもちろん必要ですが、現場での態度が大切です。
通訳はいつ通訳が必要になるか神経をはりめぐらせていなければなりません。
たとえば、ある人が中国人を目の前にしてキョロキョロしている。これは通訳を探している合図です。そのかすかな合図を見逃さず、すかさずその方の近くに行き、目と目で合図して(通訳やってくれる?はい、させていただきます!)通訳がはじまる。
「通訳をお願いします」と言われたら負け。ぐらいに思い、いつも神経を尖らせ、でも、笑顔を忘れずに(と言っても話者が厳しい顔をしている時には話者と同じようにしますが)、通訳するだけではなく、その場の雰囲気作りにも気を配る。そんな通訳になってくださいませ。
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