○○から読み取る!中国のc文化(1)

今日のテキスト本文

李:王老师在吗?我是他的学生。
職員:他不在。他在家呢。
李:他住哪儿?
職員:他住十八楼一门,房间号是601。
李:您知道他的电话号码吗?
職員:知道,62931074。
李:他的手机号码是多少?
職員:不知道。
杨寄洲主编《汉语教程 第一册 上》北京语言大学出版社 第十课より

これは事務所にやってきた韓国人留学生の李さんが事務所にいる事務員(の先生…中国では直接の教育に携わらない、大学の事務員も“老师”と呼びます。)に王老师の個人情報を聞くシーンです。このシーン、先生の個人情報である住所、自宅の電話番号を職員さんがあっさり伝えてしまいます。日本人からすれば、こんな簡単に個人情報が流れてしまうなんてとテキストだけの世界じゃないの?と思われるかもしれません。でも、テキストにでてくるだけあって、それほど不自然な状況でもないようです。

2002年に私が北京に留学した時、北京大学の有名な先生の授業にでました。一回目の授業で、何か質問があれば電話をくださいと黒板に書いたのはご自宅の電話番号でした。正直驚きました。中国の大学の先生は個人の研究室を持つ人は少ないので、メールで解決できるならいいのですが、少々急ぎで先生個人に連絡をしようとなると結構大変。それで、こういうことになるわけです。それから10年ほどたつわけですが、このような気軽に伝える習慣は現在どうなっているでしょうか…おそらく抵抗のある人も少しでてきていると思いますが。

もう一つ、中国の学生と先生の関係で驚いたことがあります。それは、中国には自分の学生の恋愛にも世話を焼く方がおられることです。私の中国人の友人が大学生だった時に、今度、先生が紹介してくれた男性に会うという話をしてくれました。どういうこと?と聞きなおすと、彼氏のいない女の子にはいい男性を紹介してくれるんだというのです。そして、その友人の友人にはそれでうまくいって付き合っている人もいるとのこと、何となく中国ならではの人間関係だなあと感心しました。また、こんなこと普通にあるのかと聞いたら、そんなにおかしなことでもないというから驚きました。
電話番号の話といい、この話といい、中国の先生と学生の関係は、日本とはちょっと形が違いますね。

※後日調査…2014年2月に南京や四川の留学から戻ってきたばかりの私の学生に聞いたら、やっぱり先生方はみな一様に自身の携帯番号や微信(WeChat)のIDを黒板に書くとのことでした。まだまだ変わりないようですね。


c文化とは? 文学、歴史、音楽、芸術をculture with a capital C(大文字のC文化)と呼び、言語を話す国、人々の生活様式をculture with a small c(小文字のc文化)と呼ぶ。外国語教育においてはc文化を取り入れるべきと主張している。(Brooks1964,1975)
ここでは、テキストやレアリアの中に埋め込まれたc文化を取り上げ、中国の小さな文化を探そう!というわけ。


参考文献
Brooks,N(1964) Language and Language Leaning.2nd ed. New York : Harcourt Brace Jovanovich
Brooks,N(1975)“The analysis of Language and Familiar Culture.” The Cultural Revolution, ed . by R.C.Lafayette.Lincolnwood ,IL: National Textbook Company.

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中西 千香

中西 千香愛知県立大学准教授

投稿者プロフィール

中西千香(なかにし・ちか) 金沢市生まれ。02~03年北京語言大学留学。2010年愛知大学大学院中国研究科博士後期課程修了。博士(中国研究)。98年より中国語教育に従事、高校や市民講座などで教える。09年愛知淑徳大学外国語教育センター常勤講師、10年愛知県立大学講師、11年より准教授、現在に至る。愛知大学講師を兼任。専攻分野は中国語学、中国語教育学。とくに現代中国語における前置詞の機能の研究、中国語教育におけるIT、レアリア教材の活用に取り組んでいる。著書に『商務日語慣用語表現560(ビジネス日本語慣用語表現560)』(大連出版社、共著)、『気持ちが伝わる!中国語リアルフレーズBOOK』(研究社)、『Eメールの中国語』(白水社)がある。

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