中国語医療通訳トレーニング:第8回 歯科/牙科

今回は、歯科での医療通訳です。
ある患者さん、親知らずが痛むようになり、近所の歯科医院を受診したものの、抜歯には手術が必要だと言われて設備の整った市内の大病院を紹介されました。

歯科/牙科

(在诊室)
医生:马先生,你好! 我看了你带来的介绍信,是要拔智齿的,对吧。
患者:对。我平时刷牙挺注意的,不过最近喝冷饮时感觉牙齿有点儿痛。
医生:是吗。疼的是哪一颗牙呢?
患者:是右边下面最里面的牙。
医生:那先让我看一下。我要把椅子放倒了,请注意。请张开嘴。哦,已经变成蛀牙了,面积还挺大的。
患者:刷牙时我照镜子发现我的牙发黑了。还是拔掉比较好吧。
医生:嗯,看起来前面一颗牙也已经是蛀牙了,这智齿还是最好拔掉。我要把椅子靠背复原了。我们要拍张X光片,请你到X光检查室。
患者:好的。

(X光检查)
技师:您好!为了防止辐射,先请穿上防护服。稍微重一点,请注意。请坐,下巴放这儿。为了保持上下牙隔开,请咬好这个器具。机器要转动,同时放音乐,停止之前请不要动,以免照片发虚。现在开始拍了啊。
好了,拍完了,可以动了。

(在诊室)
医生:辛苦了。这是刚才拍的X光片。左右两面智齿都是横着长,好像是食物残渣嵌塞到缝隙中,后来变蛀牙了。还是最好拔掉了吧。
患者:是要动手术吧,全麻吗?
医生:不,是局麻。因为牙根离神经和血管很近,要一点一点地把牙敲碎,同时削一部分颚骨才能拔出来。
患者:我想趁这个机会把两边的智齿都拔掉,可以吗?
医生:因为智齿拔掉后会疼,这期间嚼东西也会有点儿困难,所以不能两边同时拔。先拔一颗,过一个月左右后再拔另一颗。
患者:是这样啊。那么请您先拔右侧的蛀牙。
医生:好的。下周二下午三点有空,你看怎么样?
患者:那就定这个时间吧。
医生:那请你提前半个小时,两点半直接到日间手术中心。今天可以先去验血,一会护士给你说明有关手术的注意事项,听完说明后就可以回去了。
患者:明白了。

(手术当天,在手术室)
医生:先打麻药,请张开嘴巴。稍微有点刺痛啊。手术时如果麻醉效果减弱,疼起来的话请举手示意。
患者:知道了。
医生:好了,手术结束了。你看,这就是你的智齿。因为我们边打碎边拔牙,所以已经变得很碎了。现在你的牙床上有个洞,里面塞着一块纱布止血。请紧紧咬住两个小时左右。一两个小时后麻药会失效,到时请吃止痛药。今后两三天唾液里会带血,三到四天后疼痛最强。大约一个星期后可以去拆线,去你家附近的牙科就可以。
患者:好的。
医生:如果用力漱口,或着用牙刷、舌头等碰到伤口的话,血块会掉落。这样颚骨就会被露出,疼痛也会持续很长时间,请你多注意。
患者:我会注意的。谢谢您!
医生:请多保重。

(日本語)
(診察室)
医師:こんにちは、馬さんですね。本日担当いたします、歯科医師の藤田です。紹介状を拝見しましたが、親知らずの抜歯を希望されているのですね。
患者:はい。注意して歯を磨いていたのですが、最近になって冷たい飲み物がしみるようになってきました。
医師:なるほど、痛むのはどちらの歯ですか。
患者:下の歯の右奥です。
医師:それではさっそく拝見いたしますね。では、椅子を倒します。はい、口を大きく開けてください。なるほど、結構大きな虫歯になっていますね。
患者:歯磨きのときに自分で鏡を見て、黒くなっているのに気がついたんです。やはり抜いた方がいいですよね。
医師:そうですね。手前の歯も虫歯になっているようですし、抜いてしまった方がいいでしょう。では、椅子を戻しますね。レントゲンを撮らせていただきたいので、X線検査室に行って頂いていいですか。
患者:わかりました。

(X線撮影)
技師:では、初めにこのプロテクターを掛けてください。被曝を防ぐためのものです。少し重いのでお気をつけください。おかけになって、ここにあごを乗せてください。上下の歯が重ならないようにしますので、この器具をしっかり噛んでください。機械が回転して、音楽が流れますので、終わるまで決して動かないようにしてください。写真がぶれてしまいますので。では、撮影します。
はい、終わりましたのでもう動いて結構です。

(診察室)
医師:お疲れ様でした。こちらが先ほど撮影したレントゲン写真です。左右の親知らずが真横を向いて生えていますので、隙間に食べかすが詰まって、虫歯になったようです。やはり抜いた方がよさそうです。
患者:手術になるのですよね? 全身麻酔ですか?
医師:いいえ、局所麻酔で行います。歯の根っこが神経や血管の近くにありますので、少しずつ歯を砕き、あごの骨を削りながら取り除いていくことになります。
患者:この際なので、両方抜いてしまいたいのですが。
医師:親知らずを抜くと痛みが出たり、しばらく物が噛みにくくなったりするので、両方同時に抜くことはできません。まずは片方抜いて、1か月くらい期間をあけて再度手術をすることになります。
患者:そうですか。では右側の虫歯の方を先にお願いします。
医師:わかりました。来週火曜日の午後3時であれば空きがありますが、いかがですか。
患者:その時間でお願いします。
医師:では、30分前の2時半に日帰り手術センターに来てください。今日は血液検査だけ受けていただき、看護師から手術に関する説明をいたしますので、それを聞いてお帰りください。
患者:わかりました。

(手術当日、手術室にて)
医師:まず、麻酔を打ちますので、口を大きく開けてください。少しチクリとしますよ。途中で麻酔の効きが弱くなったりして、痛みが出てきた場合は、手を上げて合図してください。
患者:わかりました。
医師:はい、終わりましたよ。これが馬さんの親知らずです。砕きながら取り除いたので、かなり細かくなってしまっています。今、歯茎には穴が空いていますので、ガーゼをつめて止血しています。2時間くらいはぎゅっと噛みしめておくようにしてください。1~2時間すると麻酔が切れてきますので、痛み止めを飲んでください。2日間くらいは唾液に血がまじり、3~4日後くらいに痛みのピークがきます。1週間くらいしたら糸を取ってもらってください。かかりつけの歯科でかまいませんので。
患者:わかりました。
医師:強くうがいをしたり、歯ブラシや舌で傷口を触ると、かさぶたが剥がれてしまいます。そうなるとあごの骨が露出してしまい、痛みがずっと続いてしまいますので、くれぐれもご注意ください。
患者:注意します。どうもありがとうございました。
医師:どうぞお大事に。

単語

智齿 zhìchǐ:親知らず
介绍信 jièshàoxìn :紹介状
拔 bá :抜く
刷牙 shuā yá :歯を磨く
牙齿 yáchǐ :歯
张开嘴 zhāngkāi zuǐ :口を開ける
蛀牙 zhùyá :虫歯
照镜子 zhào jìngzi :鏡を見る
发黑 fā hēi :黒くなる
防护服 fánghùfú :プロテクター
辐射 fúshè :放射する
转动zhuàndòng :回転する
放音乐 fàng yīnyuè :音楽を流す
照片发虚 zhàopiàn fāxū:写真がぶれる
残渣 cánzhā :かす
嵌塞 qiànsāi :はまりこむ
缝隙 fèngxì :すきま
动手术 dòng shǒushù :手術をする
全麻 quánmá :全身麻酔
局麻 júmá :局所麻酔
牙根 yágēn :歯根
碎 suì :砕く
削 xiāo :削る
颚骨 ègǔ :顎骨
趁机会 chèn jīhuì :機会に乗じる
日间手术 rìjiān shǒushù :日帰り手術、(门诊手术とも)
验血 yànxuè :血液検査をする
麻药 máyào:麻酔薬
举手 jǔshǒu :手を挙げる
示意 shìyì :合図する
牙床 yáchuáng :歯ぐき
洞 dòng :穴
塞 sāi :つめる
纱布 shābù :ガーゼ
止血 zhǐxuè :止血する
咬紧 yǎojǐn :しっかり噛む
失效 shīxiào :効果が切れる
止痛药 zhǐtòngyào :鎮痛剤
唾液 tuòyè :唾液
拆线 chāixiàn :抜糸する
漱口 shùkǒu :うがいをする
血块 xuèkuài :血塊

ポイント

 「親知らず」は正式には「智歯(ちし)」といいます。中国語でも “智齿”といいます。
 「鏡を見る」(“照镜子”)、「手術をする」(“动手术”)、といった表現は、コロケーション(よく見られる単語同士の組み合わせ)として、動詞とセットで覚えることをおすすめします。“手术”は“做手术”でもかまいません。
 “全身麻醉”、“局部麻醉”は、よく“全麻”、“局麻”と略されます。“麻药”は「麻薬」ではなく「麻酔薬」を指しますので注意してください。「麻薬」は“毒品”といいます。
 日本語の「抜歯」と「抜糸」はどちらも「ばっし」と読みますので、誤解を招かないよう、歯科ではよく抜糸を「ばついと」、「糸とり」と言います。
 「かかりつけ」という語には“经常就诊的医院”(よく行く病院)、“家庭医生”(家庭医)、または“主治医生”(主治医)という訳語があてられています。ここでは、「近所の歯科」という意味で、“你家附近的牙科”としています。場面に応じて訳しわけるといいでしょう。

中国語・医学監修  李宏(医学博士・神戸大学大学院医学研究科内科系講座放射線医学分野研究者・神戸東洋医療学院講師)
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岡本悠馬 & Wen Jun

岡本悠馬 & Wen Jun中日医療通訳

投稿者プロフィール

岡本悠馬
神戸市外国語大学中国学科卒業。在上海日本国総領事館勤務を経て、中国語翻訳者・鍼灸師となり、神戸市に「南天はり灸治療院」を開院。中国語・医療知識を生かし、医療通訳者としても活動している。現在は神戸市外大にて専攻/兼修中国語、医療中国語ならびに医療通訳・コーディネーター入門の講義を担当。大阪大学医療通訳コースでも講師を務める。著書・訳書に『キクタン中国語【上級編】』、『海角七号―君想う、国境の南』などがある。

Wen Jun
中国の大学で修士課程(高等教育学)を修了した後、日本の大学院に留学。対台貿易営業等に従事した後、医療日本語に関心を持ち、大阪大学医療通訳養成コースを修了(第1期)。現在は大阪府内の病院にて医療通訳と医療事務に従事している。日本病院会診療情報管理士通信課程在学中。普通話水平測試(中国語標準語水準検定)1級乙レベル。

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