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第16回 元首たちの古典教養その9――凡交,近则必相糜以信,远则必忠之以言――|現代に生きる中国古典
- 2016/1/19
- 現代に生きる中国古典, 西川芳樹
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2006年4月、当時首相であった温家宝は、オーストラリア、ニュージーランド、フィジーそしてカンボジアを歴訪しました。忙しい外交日程の中、温家宝は、各地の華僑とも会談し、国が平和な環境をつくる方法として次のように述べました。
温家宝が引いた「凡交,近则必相糜以信,远则必忠之以言」は、『荘子』「人間世」篇に見える言葉です。非常に長い文なので、温家宝が引いた言葉の前後だけを挙げることにします。
春秋時代、楚の葉公が斉へ外交に行く際、役目をきちんと果たすにはどうしたよいかを孔子にたずねました。すると孔子は答えます。
両国の関係を確かなものにするには、誠実な心で人間関係を築き、疎遠な者には言葉を用いて真心ある関係にする。「人而無信、不知其可也(人として信がなければ、うまくやっていけるはずがない)」(『論語』「為政篇」)など、人間関係の構築に「信」を重んじる孔子らしい言葉です。
孔子は、上のように述べた後、さらに続けて、どのような言葉を使えば誠実な関係になれるのかをアドバイスしています。いわく、双方が喜んで相手を褒めすぎたり、双方が怒って相手を悪く言いすぎたりすると、言葉は度が過ぎたものになって事実から離れ、事実から離れると信用がなくなるので、ありのままに話すべきである。また、礼に従い酒を飲むと、始めは慎んでいるが、終わりにはきっと乱れ、極端な場合はとんでもない快楽を求めるように、上品に始まっても、終わりは乱れる。始めがいい加減では、終わりにはとんでもないことになるとも言っています。
信頼関係を築くことの大切さ、このことは、国と国の関係だけではなく、人間関係、会社関係など、およそ人間が社会で作るさまざまな関係すべてについて言えることでしょう。胸襟を開いて話したい時、打ち明け話をする時などにこの言葉を使ってみてはどうでしょうか。
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