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第14回 元首たちの古典教養その8―――草树知春不久归,百般红紫斗芳菲―|現代に生きる中国古典
- 2015/11/13
- 現代に生きる中国古典, 西川芳樹
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2012年5月8日、北京で第四次米中戦略経済対話が開かれ、米中両国の関係発展と、あらゆる方面の長期的問題についての戦略的対話がなされました。当時の国家主席だった胡錦濤は、開幕式で式辞を述べ、その最後を次のように締めくくりました。
胡錦濤が引いたのは、韓愈の「晩春」という詩です。韓愈は文章家として有名ですが、数多くの詩も残しています。以下に「晩春」を挙げます。
韓愈の詩は、「晩春」のタイトルが示すように、春の終わりが近づき、春のうちになすべきことを知る草木が、チャンスを逃すまいと花を咲かせ、花をつけない柳は綿毛を飛ばし、楡は銭の形をした実を捲くという、晩春の草花を詠んだものです。
胡錦濤は、自身の言葉通り、春を逃さず咲く花のように、時期を逃さず、その時に頑張ってするべきことをする、つまり、この会議で米中両国の関係をより発展させるよう機会を逃すべきではないという意味でこの詩を引用しています。胡錦濤が、演説で古典を引用した記録は、他の元首たちと比べるとそれほど多くありません。しかし、春の風景を描いた詩を、建物の名前とかけて、好機を捕まえて事を為す意味に仕立て直した機智は、胡錦濤の優れた古典運用能力を物語っています。
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