日本語は「…しろ」と言えば命令、それを「…して下さい」と言えばお願いになり丁寧な表現になります。例えば、「座れ」は命令、「座って下さい」は丁寧な言い方ですね。
中国語はどうでしょう。“坐”と言えば「座れ」、“请坐”で「座って下さい」になります。簡単簡単……と、そうは問屋が卸さないのです。実は“请”など使わなくても「座わって下さい」の意味になります。“请”だけが「…して下さい」の専売特許ではありません。
では、どう言うかというと……“坐”と言います。これだけ? はい、これだけです。但し、席を勧める手振りをして、微笑んで優しく言います。そうでないと、「座れ」になってしまいます。
中国語は、日本語のように命令とお願いがはっきり区別されていません。そこで、まず口調、表情、態度などのパフォーマンスが、日本語以上に言葉のニュアンスに大きく影響します。
ある程度親しい間柄で、それを行うと相手に有益であれば、むしろ“请”を使わないほうが普通です。訪問を受けて“快里边坐”「中にお入り下さい」。料理を勧めて“多吃一点儿”「たくさん食べて下さい」など。そしてさらに敬意や親しみを強調するなら、“王老师,坐”、“张红,快里边坐”、“李先生,多吃一点儿”のように最初に相手の名前を呼びます。これだと、年長者に対してでも安心して“请”を省くことができます。
ご存知の方も多いと思いますが、中国では相手の名前を呼ぶだけで「こんにちは」や「おはようございます」のような挨拶になります。むかし、確か京都でしたか、中国語を教えていたとき、同僚の中国人講師は、朝会うといつも「モリカワセンセイ!」と挨拶してくれました。日本語ですが中国式なので、後に「おはようございます」とは続きません。名前を呼んで、私に敬意と親しみを表してくださったのです。
相手の名前を知らないとか、それほど親しくないから“你好”や“你早”で挨拶を済ますのです。“请”にしてもそうです。親しい間柄でも、状況によっては必要ですが、どちらかと言うと、接客業などの相手の名前も知らないビジネスライクな関係のほうが多用されるように思います。
余談ですが、中国人の先生に中国語を習っていらっしゃる方は、先生にどう挨拶されていますか。“你好!”で済ましていらっしゃいませんか。“×老师!”とか、せめて“老师好!”としたほうがいいと思います。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。