中国語学エッセイ:中国語は英語に近いか

 中国語を少し勉強した人は、「中国語の文法は英語と同じ」だとよく言います。しかし、ある部分はそのとおりですが、ある部分はそうではないのです。
 英語と同じだと言う人は、その典型的な例として「S-V-O」という語順を挙げます。確かに、以下の例のように中国語も基本的には「S-V-O」の語順をとります。

  我吃面包。(私はパンを食べます)
  我看电影。(私は映画を見ます)

 ところが、学習が進んでくると、本当に中国語は「S-V-O」なのか、はなはだ疑問に思えてくるはずです。それは、次のような文も中国語として成立するからです。

  面包,我不吃。(パンは、私は食べません)
  那个电影,我看过。(あの映画は、私は見たことがあります)
  我肚子饿了。(私はお腹がすいた)

 これらは、いわゆる「象は鼻が長い」という、2つの主語を持つ文、あるいは、主題化された文といわれています。
 このような文型は、日本語では珍しくはありません。中国語も、特に「主題化」しようとすれば、目的語をかなり自由に文頭に置けるのです。
 また、いわゆる目的語も、英語のようにいつも単純な「矢」と「的(まと)」との関係、つまり動作行為の対象にはなっていません。例えば、“洗凉水”(冷たい水で洗う=道具)、“吃食堂”(食堂で食べる=場所)、“盖房子”(家を建てる=結果)、“笑什么”(何を笑ってるの=原因)、“来了一个人”(1人の人がやってきた=存在・出現)などです。
 このほか、現在の“普通话”では、修飾構造も基本的には「修飾語+被修飾語」という順序で日本語と同じです。
 このようなことから、中国語はむしろ日本語に近いといったほうがいいかもしれません。

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内田慶市

内田慶市関西大学外国語学部教授

投稿者プロフィール

福井生まれ。現在、関西大学外国語学部で教鞭をとる。専攻は「中国語学」。この10数年は特に、「近代における『西学東漸』と言語文化接触」を主な研究テーマとし、さらには、新たな学問体系である「文化交渉学」の確立を目指して研鑽中
パソコンは約25年前に、NEC9801VXIIを使い始め、その後、DOS/Vから「Mac命」に。Mao's Home Page

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