中国語を少し勉強した人は、「中国語の文法は英語と同じ」だとよく言います。しかし、ある部分はそのとおりですが、ある部分はそうではないのです。
英語と同じだと言う人は、その典型的な例として「S-V-O」という語順を挙げます。確かに、以下の例のように中国語も基本的には「S-V-O」の語順をとります。
我吃面包。(私はパンを食べます)
我看电影。(私は映画を見ます)
ところが、学習が進んでくると、本当に中国語は「S-V-O」なのか、はなはだ疑問に思えてくるはずです。それは、次のような文も中国語として成立するからです。
面包,我不吃。(パンは、私は食べません)
那个电影,我看过。(あの映画は、私は見たことがあります)
我肚子饿了。(私はお腹がすいた)
これらは、いわゆる「象は鼻が長い」という、2つの主語を持つ文、あるいは、主題化された文といわれています。
このような文型は、日本語では珍しくはありません。中国語も、特に「主題化」しようとすれば、目的語をかなり自由に文頭に置けるのです。
また、いわゆる目的語も、英語のようにいつも単純な「矢」と「的(まと)」との関係、つまり動作行為の対象にはなっていません。例えば、“洗凉水”(冷たい水で洗う=道具)、“吃食堂”(食堂で食べる=場所)、“盖房子”(家を建てる=結果)、“笑什么”(何を笑ってるの=原因)、“来了一个人”(1人の人がやってきた=存在・出現)などです。
このほか、現在の“普通话”では、修飾構造も基本的には「修飾語+被修飾語」という順序で日本語と同じです。
このようなことから、中国語はむしろ日本語に近いといったほうがいいかもしれません。