中国語学エッセイ:「傘」「ピストル」「いす」に共通するもの

 中国語の「具象性」を最もよく表しているのが「量詞」といわれるものです。
日本語にもこれと類似した「助数詞」があり、数を表す語に添えて、何の数量であるかを示します。ただし、中国語と日本語では使い方に若干違いがあります。
 例えば、日本語で「1冊の本」や、「1杯のコーヒー」という場合、中国語では、“一本书”“一杯咖啡”となります。英語にも「容器」で数える言い方はありますね(a cup of coffee など)。
日本語の場合、前に「この」などの指示代名詞を伴ったときには、「この冊の本」や「この杯のコーヒー」とは言いません。ところが中国語では、指示代名詞があっても“这本书”(この本)、“这杯咖啡”(このコーヒー)と、必ず「量詞」を名詞の前に置くのです。つまり、「ものを指し示したり、数えたりするときは必ず名詞の前に量詞を用いる」のが中国語の特徴です。
 また、「同じ形状・形態のものは同じ量詞を使う」という原則があります。ですから、名詞の前に長い修飾語があっても、量詞があれば「最後にくる名詞」を予想することができます。そのものの「形状・形態」を思い浮かべることができるというわけです。
 ただし、日本人の感覚からは「これらの名詞のどこが共通点?」と理解しにくいものもあります。“椅子”と“手枪”(ピストル)と“伞”が同じ量詞を使うのですから(プロレスではいずれも「凶器」になりますが……)。日本人だったら“椅子”と“桌子”(机)は同じ家具類ととらえるでしょう。でもよく考えるとわかるはずです。いずれも「手で持てる」という形状を持っているのです。いずれにせよ、これも「ものの見方」の違いといえるでしょう。

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内田慶市

内田慶市関西大学外国語学部教授

投稿者プロフィール

福井生まれ。現在、関西大学外国語学部で教鞭をとる。専攻は「中国語学」。この10数年は特に、「近代における『西学東漸』と言語文化接触」を主な研究テーマとし、さらには、新たな学問体系である「文化交渉学」の確立を目指して研鑽中
パソコンは約25年前に、NEC9801VXIIを使い始め、その後、DOS/Vから「Mac命」に。Mao's Home Page

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