「中国語は漢字を使っているから、聞いてわからなくても書けば通じるし、新聞も見ればだいたいの意味はわかる」「旅行に行っても困らない」という話を聞くことがあります。でも、本当にそうなのでしょうか。実際に中国語を学習している人が簡単な中国語でもうまく訳せなかったり、書けなかったりするのはなぜなのでしょうか。つまり、「簡単だ」と言う人は、まともに中国語を勉強したことがない人たちなのです。
もちろん「漢字文化圏」ですから、同じ漢字もたくさんあります。「簡体字」と「常用漢字」の違いこそあれ、「我」「日本」「学校」「大学」などは日本語とまったく同じです。でも、だからといって、中国語と日本語は「同文同種」だと考えるのは間違いなのです。
中国語の“老婆”は年をとっていなくても「“老婆”(妻)」ですし、“走”(歩く)は決して走ってはいません。“我去中国”は「中国を去る」のでなくて「中国に行く」のです。“汤”に「男湯」「女湯」の区別はありません。「スープ」という意味です。
このような、まったく意味の異なるものばかりでなく、例えば“感到不安”(不安に思う)の“不安”(申し訳ない)や、“严重的灾害”(ひどい災害)、“深刻的印象”(深い印象)、“自我批评”(自己批判)、“同情”(共鳴する)など、日本語の意味と近いようで離れているものもたくさんあります。
日本は漢字の国ですから、欧米人に比べれば、最初は中国語を学びやすいという利点があります。でも、それはまた同時に「欠点」にもなるわけです。欧米人に比べて「聞く」「話す」が苦手ということもあります。あくまでも「中国語は外国語である」ことを心に留めて学習を進めてください。そのことは、かつての日中の不幸な歴史の教訓でもあるのです。