「うさぎとかめ」の話はよく知られたイソップの寓話(ぐうわ)の一つです。イソップの中国語訳の最初は明代のヨーロッパ人宣教師によるものです。最も有名なのは、1840年にイギリス人のロバート・トームによって中国語に訳された『意拾喩言』です。この訳の面白いところは、場面設定や登場人物を中国化していることです。「アフロディーテ(ビーナス)」は“嫦娥”(月に住むという伝説上の聖女)に、「ヘラクレス」は“阿弥陀佛”(阿弥陀仏)になっています。「うさぎとかめ」の時代は「禹(夏王朝の開祖)が治水をしたとき」となっています。ところで、「うさぎとかめ」のタイトルです。これが実は“龟兔”となるのです。現代中国語訳でも“乌龟和兔子”となります。つまり、日本語と中国語では並びが逆になっているのです。これはいったいどういうことでしょうか。「白黒テレビ」が“黑白电视”となるのも同じことですが、これは「声調」と関係があると考えられます。映画「北京の思い出(城南旧事)」の出だしのナレーションの下線部分も、それを暗示しています。
然而这些童年的琐事无论是酸的、甜的、苦的、辣的,都永久永久地刻印在我的心头。
味の五感が、suān、tián、kǔ、làのように、声調順に並んでいるのです。