第2回 研究例会報告

1.日時
日時:2015年2月28日(土) 13時00分〜17時00分
場所:関西大学以文館4Fセミナースペース
参加者:33名
※第2回研究例会は、科研費・基盤研究 (C) 課題番号:25370665「中国語教育におけるワンコンテンツ・マルチユースに基づく実践的教材共有のモデル化」と関西大学若手研究者育成経費 「中国語教育におけるビックデータ構築の基礎研究」の助成を受けたものです。

2.タイムスケジュール
13:00-13:10 会の説明
13:10-14:20 教育実践(1):中西千香
14:30-15:00 私の授業:須田美知子
15:10-16:20 教育実践(2):神道美映子
16:30-17:10 簡単!使える!メディア教材!:樋口拓弥

3.報告概要

教授実践(1) 中西千香

より自己発信型にするための初級中国語教育~この一年の試行と評価を中心に~

 本発表では、それを試みた2014年度A大学K学部での第二外国語科目、中国語入門I、IIでの実践報告を行った。テキストを使った、通常の一年の授業をやりつつ、毎学期の最後には、学生全員に対して自主的に行う、動画作成のタスクを課した。また、その際の評価はルーブリックを使い、学生にもどこを評価するかを明らかにした上で行った。
 通常の授業を進行しながら、動画作成タスクをいかに行ったかをここでは紹介した。発表者からは、自己反省を込めて、この授業の問題点、改善方法についてもなげかけた。また、動画タスクのルーブリック作成も多少問題を感じていたので、ルーブリックが適切であったかについても考えた。
 聴衆からは、一年間の授業の内容について、ルーブリックを使った動画作成タスクについて、それぞれの質問を受けた。どの段階でルーブリックを学生に与えるのか、ルーブリックでの評価のフィードバックはしているのかなどの質問があった。
 グループディスカッションでは、ルーブリックの使い方についてはもちろん、日頃の授業の運営についての議論もなされた。

配布資料

私の授業【模擬授業】 須田美知子

高校選択科目としての中国語 ― 入門時の指導例

 選択科目の中国語で、ほぼ毎年、最初は全くその気のない高校生をスピーチコンテストに出場させています。正しい発音で、自分が言ったことが通じるという経験をしたければ、個人レッスンを受け、スピーチコンテストに出る以外に道はないと言って出場者を確保してきました。
 自主的に取り組むことのない高校生をどのように中国語に向かわせてきたかという経験を、具体例を挙げながらお話ししました。
 スタート時の導入部分では、巨大な歯の模型を使ってそり舌音の発音法を説明したり、日本語での清音・濁音の違いで意味が変わる例を挙げたりして、生徒に分かるようにするという工夫をして一気に中国語の世界に引き入れています。
 有気音・無気音、鼻音を伴う母音は、恥ずかしさを捨て、教師自身がエンターテナーになったつもりで歌を歌ってみせます(アイドル歌手の発音では唇を横に引き気味に、オペラ歌手なら引かずに奥の方から出して、anとangの違いを出す)。
 また、eやengは、いろいろ方法はあると思いますが、私は「思いっきりアホな顔、ボーっとだらしなく口を開いて出した音」という説明の仕方で指導しています。これは生徒には強烈な印象があるらしく、何年もたった卒業生も、いつまでも覚えているくらいです。
 スピーチコンテストに出るといっても、勉強第一の生徒ばかりではありません。アルバイト第一、という生徒のほうが多いくらいです。そんな生徒を長い間拘束して練習させられません。そこで、原稿にさまざまな印を付け、そのマークでは何を注意しないといけないかを最初に説明しておきます。次に生徒がちょっとの時間でも練習できるように、スマホなど面倒ではないツールを使います。教師自身が模範朗読し、生徒にケータイの動画を撮らせます。それは発音時の口の形が大事だと考えているからです。それを見ながら何度も練習させます。そして練習に来られない時には、生徒の発音の録音を教師に送るようにさせています。
 そんな成果を実際の授業風景を撮影したビデオや模擬授業の形式でご覧いただきました。

教授実践(2) 神道美映子

単元「自己紹介/家族紹介」のコミュニケーション活動例

 本報告は、大学における第二外国語教育としての中国語の授業実践によるものです。コミュニケーション活動の具体例を示してアイディアを共有するとともに、単に活動そのものに目を向けるだけではなく、何を意識して活動すべきか、ということを参加者と共に考えることを目標としました。
 今回のテーマは、ほとんどの入門・初級テキストで扱われている「自己紹介」や「家族紹介」の単元をベースとした「人物紹介」です。活動実践例および、その留意点や実践結果について、学生が作成した資料を交えながら具体的に紹介しました。グループ発表形式と個人発表形式の二例を取り上げましたが、いずれも、クラスサイズや学習歴に応じて臨機応変に取り入れられる活動です。また、「アクティブラーニング」や「反転授業」の授業デザインのヒントとなるテキストとして、『プライマリー1・2』(好文出版)についても触れました。
 報告者は、授業デザインの際に最も重要なことは中国語教育の最終目標を見失わないことだと考えています。各単元でのバックワードデザインのみならず、年間目標からのバックワードデザイン、ひいては大学における第二外国語教育目標からのバックワードデザインでの授業計画が不可欠です。中国語教育を通して、最終的にどのような学生を育てたいのか、ということを常に意識していれば、おのずとそのクラスに必要な学習活動が見えてくるのではないでしょうか。
 最後に、認知領域の視点から「レベルの高い授業とは何か」についての問いを投げかけました。

簡単!使える!メディア教材 樋口拓弥

Yubiquitous Textについて

 Yubiquitous Textは教室内での言語教育向けに開発されたアプリで、特に音声やビデオを教材として扱う授業を対象としたものです。アプリ自体にはスクリプトや音声・ビデオを内蔵していないためユーザー自身が好きな素材から簡単にテキストをつくることができます。またウェブサイトCHLANGではYubiquitous Textで利用できる公開データを提供しています。この公開データは市販の教科書に対応しているものもあればフリー音源を提供しているものもあり、教室や学習者の自習教材として利用することができます。 
 今回のワークショップではこのYubiquitous Textの使い方を、データの作成から教室や自習などでの利用方法、公開データの利用方法、ユーザー同士のシェア方法などに分けて詳しく解説しました。