“把”構文[#1][#2]

“把”によって目的語を動詞の前に出したSOV型の構文。既存の事物に何らかの処置を加えてある状態にすることを表すため、動詞の後には事物の結果状態や変化を表す結果補語や方向補語などの成分を加える必要がある。
主語+“把”+目的語+動詞+付加成分
主語+“不/没”+“把”+目的語+動詞+付加成分

例文

CD203

A:我把这本书都看完了。
B:怎么样?有意思吗?
この本を全部読み終えました。
どう、面白かったですか?


A:你把作业做完了吗?
B:我没把作业做完。[#3]
宿題をやり終えましたか?
宿題をやり終えてません。


A:怎么了?
B:我把钥匙忘在房间了。[#4]
どうしたの?
鍵を部屋に忘れました。


A:请帮我把门关上?
B:好的。
ドアを閉めってもらってもいいですか?
分かりました。

1

 中国語の基本語順はSVO(例:我是学生。/他吃苹果了。)ですが、ある条件下においては、目的語を“把”の力を借りて動詞の前に置いた[S把OV]の形式が選択されます。この形式が使用される条件とは、①動作対象であるOが話し手はもちろん聞き手にとっても既知であり、指示対象を特定できること、②その特定のモノについて、ある動作(処置)を加え、どのような状態にするか(したか、なったか)ということを伝えることを目的とすること、です。ですから、動作対象が存在しない自動詞文や、“是”“叫”(~という)のように、主語と目的語が等価関係にあるものには、この[S把OV]構文を用いることはありません。上述のように、この“把”構文は特定の動作対象をどのような状態にするのか、ということを主に述べるために用いられるので、述語が裸の動詞だけでは成立せず、結果補語などでその動作の結果を表したり(例:我把作业做完了の“完”)、方向補語(第12課参照) で動作対象の位置変化を表したり(例:你把护照拿出来。パスポートを出しなさい)、様態補語で動作の程度を表したり(例:他把那些货卖得干干净净。彼はあれらの商品をすっかり売り切った)、数量詞や動詞の重ね型によってどのくらいの動作量を与えるかを示す(例:你把桌子擦一擦。机をちょっと拭きなさい)必要があります。SVOで表される“他吃苹果了。”は、単に彼がリンゴを食べた行為を述べていますが、“他把苹果吃了。”というと、彼がある特定のリンゴを食べて、そのリンゴはもうないという状態を表しています。“把”構文は、最初はなかなか掴みにくい構文かも知れませんが、実際の会話ではSVO語順の文よりもずっと使用頻度は高く、大切な構文です。

OK

2

 “把”構文の動詞述語は、一般には動詞+“了”だけでは成立しませんが(例:*我把书看了。私は本を見た)、動詞が損害を与える意味を持つ場合(例:“骗”騙す)、離脱(“脱”脱ぐ)、消失(例:“扔”捨てる)、動作の影響が強い動詞(例:“打”ぶつ)の場合は、動詞の後に“了”をつけただけで成立します(例:他把我骗了。彼は私を騙した/我已经把那个扔了。もうあれを捨てた)。

OK

3

 “把”構文の否定は、否定の副詞“没”を“把”の前に置きます。“不”で否定することもありますが、主に従属節や命令文などで用います(例:他不把作业做完就出去了。彼は宿題をやり終えずに出かけてしまった/你不把它扔了!それを捨てないで!)。

OK

4

 “在+名詞”が動詞の後に置かれるとき、動詞が表す動作行為(ここでは“忘”)の結果、モノの場所を表します。つまりここでは、カギを忘れた結果、カギは部屋にあると解釈します。詳しくは11課読トレの解説2)を参照にしてください。

OK